価値創造プロセス
1971年、産業の主役が重化学工業からいわゆるハイテク産業にシフトチェンジしていく時代にベンチャー企業に近い形でスタートした当社は、経営資源が限られるなかで、企業経営の基盤となる6つの資本(人的資本、知的資本、社会・関係資本、自然資本、財務資本、製造資本)をいかに効果的・効率的に活用するかを意識しながら事業を拡大してきました。
当社のビジネスモデルは、めっき用途のエレクトロニクス分野への特化(選択と集中)、単一拠点体制によるコミュニケーションや意思決定の速さ(スピード)、めっき薬品の製造を調合(フォーミュレーション)業務に絞ることによる多品種少量・短納期生産への対応の3点が特長です。
選択と集中
当社は、電気化学と経験則を基に発展してきた(おもに装飾用の)めっき技術では成長に限りがあると考え、めっきを工芸ではなく物理・化学の対象として捉えた「分子化学に基づく機能めっき技術」により、エレクトロニクス分野に焦点を絞って事業を推進しています。
物理化学のアプローチでめっき薬品を分子レベルで解析しながら開発・改良していくことで、他社より優れた要素技術が育っています。必要な部分にのみ必要な厚みのめっき加工を精度よく形成して不要な部分への金付着を抑える技術などによりお客様のコスト削減に貢献できることや、高性能(金属薄膜の物性が優れている)かつ高品質(管理しやすい製品により金属薄膜の物性のバラツキが抑制される)な製品を提供できることが当社の強みとなっています。
スピード
これらの製品を携え、「化学の好奇心」を持つ技術者が営業部門にも所属して活動を行うことで、お客様の要望に適時にかつきめ細かく応えられる体制となっています。問題発生時の問い合わせに対しても自社で分析を行い、2~3日以内(同業他社では2~3週間)で分析結果を提供してお客様のライン停止期間を最短化するなどの迅速な技術サポートを始めとして、お客様のめっき液のモニタリング分析サービスや、長年にわたり蓄積した豊富な知見に基づくめっきプロセス全般についてのアドバイスを行うトータルソリューションによりお客様との信頼関係を築いています。
それを支えているのが、営業・技術・製造部門等が1拠点に集うことによるコミュニケーションや意思決定の速さです。
フォーミュレーション
また、めっき薬品の製造においても、原材料などは外部から調達する方式を採り、製造プロセスをフォーミュレーション業務(秤量・混合・梱包)に絞ることで、多品種少量生産に対応した高付加価値製品の提供を可能にしています。
これらの強み・競争優位性を持つ当社は、4つの重要課題(マテリアリティ)を意識しながら、アウトカムとして、省資源や有害物質不使用製品の提供による地球環境への配慮、成長投資に基づく企業価値拡大と株主還元、能動型自律人材×多様な働き方での従業員エンゲージメントの向上など、さまざまなステークホルダーへ価値を提供しています。
企業理念「化学の好奇心でエレクトロニクスに役立てる」のもと、エレクトロニクス業界を牽引するファインケミカル企業となるための中長期ビジョンを「RDD2030」と銘打ち、めっきで培った酸化還元の技術で新たな事業価値を創造することを目指す当社は、事業活動から生まれるアウトプットを経営資源(インプット)に再投入しながら、当社の財務・非財務価値を持続的に拡大していきます。
人的資本
当社は知識集約型・開発型の企業であり、人的資本が企業価値向上の大切な源泉と考えています。当社が望む「能動型自律人材」を育成し、その人材が製品開発や営業活動をはじめとする事業活動を活性化するとともに、従業員が安心して働くことのできる健康的で安全な職場環境の整備によって従業員のエンゲージメントが高まることが事業成長につながる機会となると考え、①企業理念に共感し、ビジョンの実現に主体的に参画する組織風土の醸成、②能動型自律人材の採用と育成、③働きやすく、やりがいを感じる職場環境の整備という3つのテーマ・方針に沿って「人的資本経営」を推進しています。
社会
知的資本
全従業員の約8割を占める技術系出身者が営業・技術一体となって、固有技術であるProtecting Agent※等を用いた技術開発・提案を行い、お客様の課題解決に取り組む中で、実験データを始めとする化学の知見を蓄積し続けています。
また、営業・技術情報の電子化・システム化などのDX基盤整備を進めています。
※特定の金属に選択的に吸着し、電子を供与又は吸引することによって、めっき反応や皮膜物性をコントロールする一連の有機化合物。
取組み
JPC技術ジャーナル
開発・保有する当社のめっき技術やめっき液の用途・特徴などをまとめた情報を本サイトに掲載しています。
JPC技術ジャーナル
社会・関係資本
めっき薬品の製造をフォーミュレーション業務に絞ることで実現している多品種少量・短納期生産への対応や、営業・技術・製造部門等が1拠点に集うことによるコミュニケーションや意思決定の速さや手厚いサポートによって、お客様との信頼関係を培ってきました。めっき薬品のもととなる原材料の仕入先とも長年にわたり良好な関係を維持継続しています。
また、2019年2月には、資質優秀な理工学を学ぶ若人が将来の夢に向かって進むことを支援するため「JPC奨学財団」を設立し、奨学援助を行っています。
公益財団法人JPC奨学財団
自然資本
めっき薬品の製造に欠かせない貴金属や希少鉱物について、安定的な調達先を確保しています。
併せて、サステナビリティの観点から、貴金属の使用量を節約する省貴金属や、環境に悪影響を及ぼす物質の使用を回避する環境配慮型の製品開発を推進しています。
サステナビリティ基本方針
財務資本
ファブレス型・開発型企業としての効率的な経営と、収益性や競争力の高い製品により利益を積上げてきました。この結果、安定的かつ一定水準の株主還元を行いつつ、純資産は高い水準を維持しており、無借金の状態で、財務基盤は安定的に推移する見通しです。今後、政策保有株式の縮減により得られる資金を含めた手元資金を、中期経営計画で掲げた戦略投資の実行等に活用する計画です。
業績ハイライト
製造資本
新製品の開発や改良、多様なお客様のニーズにスピーディーに対応するため、めっき液や皮膜の評価・分析装置として、めっき液の不純物を分析するための高周波プラズマ分光分析装置や高速液体クロマトグラフ、めっき皮膜の表面・断面を観察・分析するための集束イオンビーム加工観察装置やオージェ分光分析装置などを備えています。
また、実験室では熟練の技術スタッフが、お客様からの依頼に基づくめっき皮膜の作製・評価や、お客様からお預かりした基板のめっき試作などを行っています。なお、めっき薬品の製造をフォーミュレーションに絞っているため、大型の製造設備は保有していません。
主要設備・装置