人的資本経営の推進
当社は知識集約型・開発型の企業であり、人的資本が企業価値向上の源泉であるため、従業員のエンゲージメントを高め、従業員の健康・安全衛生や多様性といった人的資本を活用する上で基礎となる取り組みを実施することが必要であると考えます。
当社が望む「能動型自律人材」を育成し、その能力が会社の経営戦略と一致する方向で発揮されることで、製品開発や営業活動をはじめとする事業活動が活性化され、当社事業が成長する機会になります。一方でこれが損なわれると成長機会を失うリスクとなります。
また、従業員が安心して働くことのできる健康的で安全な職場環境の整備を行うことが従業員のエンゲージメントを高める基礎となるため、これを推進することが当社事業の成長につながる機会となります。一方でこれを怠ると成長機会を失うリスクとなります。
よって、当社の企業理念に基づく中長期ビジョンを実現するためには「人的資本経営の推進」が欠かせません。
この人的資本経営の推進を実現させるために、
①企業理念に共感し、ビジョンの実現に主体的に参画する組織風土の醸成
- 本中期経営計画期間中(~2024年度)に現状のスコアを計測し、次期中期経営計画(2025~2027年度、2028~2030年度)における目標スコアを設定のうえ、従業員のエンゲージメント向上につながる施策(諸制度の見直し、働き方の選択肢の拡大、1on1等の対話機会の拡充等)に継続的に取り組んでいきます。
②能動型自律人材の採用と育成
- 「能動型自律人材」に必要な教育機会・カリキュラムを整備し、従業員全員が受講することを計画しております。
③働きやすく、やりがいを感じる職場環境の整備
- 「従業員エンゲージメントスコア(検討中)」「育児休業取得率」「女性管理職比率」を指標とし、会社の風土・制度に満足している従業員の割合が一定水準(過半)以上となっていることを測るために、エンゲージメント調査を実施することを計画中です。満足度を含む調査項目の詳細は、2024年度中に策定する予定です。
- 育児休業については、現状、希望者は全員取得しております。今後も当社の福利厚生制度の説明の機会等において、育児休業制度の周知と一層の浸透を図っていきます。
- 上記のエンゲージメント向上施策の継続のほか、女性管理職については、キャリア採用と併せてキャリア支援プログラムによるサポートを検討・実行します。
というテーマに沿って人的資本方針を策定いたしました。この方針を以て、全従業員が主体的に経営に参画する企業風土を育み、人的資本経営の実現を目指します。
人的資本方針
人材採用・育成方針
- 能動型自律人材の採用・育成…能動型自律人材とは
①好奇心をもって挑戦する人材
~社会の変化を先取りし、好奇心と探求心をもって果敢に新しいことに挑戦します~
②当事者意識をもってやり遂げる人材
~自ら考えて行動し、常に全体最適の視点で最後まで責任をもってやり遂げます~
③多様性を尊重し周囲と協働できる人材
~人を思いやり、つながりや個性を大切にすることで組織の可能性を最大化します~
- 人材の多様性確保
スキル・経験・知識を備えた人材(性別・年齢・国籍を問わない)の登用等を通じた人材の多様性の確保を推進します。
労働・安全衛生方針(社内環境整備方針)
- 労働慣行
労働慣行における方針を実現するために以下のガイドラインを遵守してまいります。
当社は、従業員※の人権を含む各種の国際規範と従業員の尊厳とを尊重します。
※ 従業員:正社員に加えて、契約社員や嘱託社員、アルバイト、パートタイマー、請負作業者など、直接の雇用関係にあるなしに関わらず、構内で働く全ての人
①雇用の自主性
全ての労働は自発的であること、また従業員に強制的な労働を行わせない。
②児童労働及び若年労働
児童労働は用いない。18歳未満の従業員に健康と安全を危険にさらす業務をさせない。
③労働時間
各国・各地域の法定限度を超えないよう、従業員の労働時間・休日・休暇を適切に管理する。
④賃金と福利厚生
賃金や福利厚生に関連する全ての法令を遵守し、不当な賃金減額を行わない。
⑤非人道的な扱い
従業員に対するハラスメントを含む、暴力、ジェンダーに基づく暴力、性的嫌がらせ・虐待、身体的懲罰、精神的・身体的強要、いじめ、公の場での侮辱やみせしめ・晒し、暴言による虐待などの過酷で非人道的な扱いをしない。
⑥差別
求人・雇用において応募者・従業員を差別しない。
⑦結社の自由
従業員と誠実に対話・協議し従業員が法律に従って自由に結社する権利を尊重する。
- 安全衛生
当社は労働関連の負傷や疾病を最小限にすることに加えて、安全で健康な職場環境により、製品・サービスの質の向上や従業員の定着とモラルの向上を目指します。
また、当社は、職場の衛生と安全問題を特定し解決するために、継続的な従業員への情報提供と教育を実施します。
労働慣行における方針を実現するために以下のガイドラインを遵守してまいります。
①職場の安全
職場の安全に対するリスクを、適切な設計や技術・管理手段を通じて管理する。
②緊急災害時対応
火災や地震など非常時の場合の状況や起こり得る出来事を特定、調査し、緊急対応策を準備する。
③労働災害・職業的疾病
労働災害・職業的疾病に関し、予防、管理、状況を把握し、報告を行う仕組みや手順を整備し実施する。
④産業衛生
職場において、人体に有害な生物や化学物質及び騒音や悪臭などに接する状況を特定・評価し、その状況の適切な管理をする。
⑤身体的な負荷のかかる作業
従業員が身体的に負荷のかかる状況におかれていることを特定し、その状況を調査・管理する。
⑥機械装置の安全対策
製造機器、その他の機械の危険度を評価し、安全対策と適正なメンテナンスを行う。
⑦衛生設備、食事、住居
従業員に衛生的なトイレ設備、飲料水を提供する。
⑧安全衛生のコミュニケーション
従業員が理解できる言語で、安全衛生に関する教育や情報を提供する。
- 健康経営への取り組み
当社は、職場の健康づくりに取り組む環境を整え、健康保険組合連合会東京連合会が主催する健康企業宣言活動に参加し、2023年5月に『健康優良企業 銀の認定』を取得しました。さらに2024年3月には『健康経営優良法人2024』にも認定されるなど、企業全体で健康づくりに取り組んでいます。
人的資本経営の具体的取り組み
人的資本方針に関する指標と目標・具体的な取り組み
当社は人的資本方針に関して以下の取り組みを行っています。いずれの取り組みも、次期中期経営計画の実行期間においても指標と目標を設け達成度合いを測定する予定です。
- 能動型自律人材となりうる人材を豊富に獲得するため、2023年度採用より各部門長が部門最適な人材像を確立し主体的に採用活動を展開する採用方式を導入しました。併せて女性採用比率、女性幹部職候補採用を重視したキャリア採用を活性化しています。
- 人材育成については、従業員全員が参集し経営方針の浸透と組織風土の醸成等を図る全社方針説明会の半期毎の開催をはじめ、各部門にて毎月1on1ミーティングを開催する等の活動により、当社に必要な人材像の理解の深化を図りました。またコンプライアンス等の人権関連課題についての当社取り組みについても、全社緊急事態訓練等の機会に全従業員への周知徹底を図っています。
- 労働安全衛生について安全衛生委員会を中心に各ガイドラインの遵守と質的向上を図る一方で、働き方選択肢の拡充にも取り組んでおります。なお2023年度時点で育児休業取得希望者は100%取得を達成しております。
人権
人権方針
当社は、「化学の好奇心でエレクトロニクスに役立てる」を企業理念とし、「社会課題と向き合い多様な視点と独自の発想力を発揮し、エレクトロニクス業界をけん引するファインケミカル企業となる」ことを目標としております。
そして、当社は事業活動を通じて様々なステークホルダーの人権に負の影響を引き起こし、または助長する可能性があることを認識しており、前述した目標達成のためにもこうした人権侵害を回避し、すべての人々の人権が尊重されなければならないことを理解しております。
そこで、当社は「人権の尊重に関する基本方針」を以下のとおり定め、当社のすべての役員と社員にて遵守してまいります。
人権の尊重に関する基本方針
人権に対する基本的な考え方
当社は、人権尊重の取り組みを推進し、その責務を果たすため、すべての人々の基本的人権を規定した国連の「国際人権章典」及び「ビジネスと人権に関わる指導原則」、国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」などの人権に関する国際規範を支持・尊重し、それらをふまえて実践に努めます。また、事業活動を行う国や地域の法令を遵守し、国際的に認められた人権と各国や地域の法令との間で相反する要請がある場合は国際的に承認された人権の原則を追求します。
人権尊重
当社は多様性を尊重し、出生、国籍、人種、民族、信条、性別、年齢、職業、雇用形態、学歴、性的指向、性自認、婚姻、妊娠、疾病、障害、社会的身分または門地などいかなる差別、並びにパワーハラスメント、セクシャルハラスメント等のあらゆるハラスメント行為を行いません。また、強制労働や児童労働は認めません。
適用範囲
本方針は、当社の全役員・全従業員(正社員・契約社員・嘱託社員・派遣社員を含む)に対して適用されます。また、当社のサプライヤやビジネスパートナーに対して本方針を支持し、人権尊重に努めるよう働きかけ、協働して人権尊重を推進します。
取り組み
①人権デューディリジェンス
当社は、人権デューディリジェンスの仕組みを構築し、これを継続して実施することで人権への負の影響の特定・評価を行い、人権への負の影響を防止・軽減することに取り組みます。
詳細は以下の「人権デューディリジェンス」の項をご参照ください。
②救済
当社が人権への負の影響を引き起こした、あるいはこれを助長したことが判明した場合、適切な手続きを通じてその救済に取り組みます。
③教育
当社は、本方針の実効性を担保するため、当社の役員・従業員に対して適切な教育を行います。
④苦情処理メカニズム
当社は人権への負の影響を含む懸念を早期に発見し、対処するため通報制度を設けています。通報においては、通報者の匿名性や通報内容の秘匿性を担保します。また通報者に対し通報を理由とする不利益な取り扱いは行いません。
⑤情報開示
人権尊重の取り組みの進捗状況及びその結果について、当社ホームページ等を通じて報告していきます。
人権デューディリジェンス
当社は、当社の人権方針に則り、当社事業活動によって影響を受ける人々を対象とした人権デューディリジェンスを実施し、顕著な人権課題を特定しています。人権デューディリジェンスの実施にあたっては、「国連指導原則報告フレームワーク」及びUNDPのアジアにおけるビジネスと人権「HRDD研修進行ガイド」(2021年)を参考にしています。
具体的には、当社事業活動によって影響を受ける主要なライツホルダーを自社従業員・サプライヤー・顧客/エンドユーザー・地域住民の4つのカテゴリーに分け、当社にとってのリスクではなく、影響を受けるこれらのカテゴリーの人々へのリスクに着目し、潜在的な人権リスクの洗い出しを行いました。その上で、リスクの深刻度とリスクの発生可能性という2つの観点から優先順位を判断し、下記のヒートマップに整理しました。その際、発生可能性よりも深刻度に重きをおいた評価を行っております。
顕著な人権課題の特定
上記ヒートマップにおいて優先度の高いと位置づけられた以下の人権課題を当社の事業活動における顕著な人権課題として特定しました。
- 紛争鉱物
- 自社従業員に対する公平・公正な処遇
また、顕著な人権課題と比べると優先度は低くなるものの、以下の人権課題についても、そのリスクを認識し、取り組みを進めてまいります。
- 職場における安全衛生(自社従業員)
- 健康被害(顧客/エンドユーザー・地域住民)
当社は、今後も定期的に人権デューディリジェンスを実施し、顕著な人権課題の見直しを行ってまいります。
顕著な人権課題への対応策
当社は、顕著な人権課題に対して、次のように取り組んでいます。
- 紛争鉱物
- 当社は、貴金属めっき薬品の製造において貴金属を使用します。(金、パラジウム、白金等)
- 紛争鉱物不調達の取り組みを進めるため、貴金属の調達にあたっては、事前にLBMA認定*1を受けた企業であることを確認しています。
- 当社の調達方針・CSRガイドライン等において、サプライヤーへの遵法のお願い事項を定め、取引先に対して定期的に調査を行っています。調査の結果、問題があると判断した場合には、改善要請を行うと共に、十分な改善が行われない場合は、取引を中止する等の措置を講じることとしています。
*1 LBMA(ロンドン地金市場協会)認定とは、金融市場における金や貴金属の取引に関連する重要な認証であり、金やその他の貴金属が紛争鉱物ではないということを証明することが可能となります。LBMA認定は金や貴金属が紛争鉱物ではないことを証明するための重要なメカニズムとなっており、国際的な金融市場において、責任ある取引の基準を確立しています。
- 自社従業員に対する公平・公正な処遇
- 当社は、少人数体制の下、業務の属人性に伴う長時間労働が散見されている現状に対応し、従業員のワークライフバランスを改善するための取り組みに着手しています。
①育児休業 希望者全員の取得
②リモートワークやフレックスタイム制度の導入検討
- 当社の女性活用に関する取り組みは以下の通りです。
①女性管理職の養成(キャリア採用とキャリア支援プログラムによるサポート)
- 職場における安全衛生(自社従業員)
- 当社は少人数でありながら正社員・パートタイマー・派遣社員からなる製造部門を有しており、労働安全衛生法において定められている第一種衛生管理者が複数名在籍し各職場における安全衛生を管理監督するとともに、各職場の代表で構成する安全衛生委員会が委託産業医とともに定期的な職場巡視等を行い労働環境の維持改善に努めております。
①第一種衛生管理者の資格取得奨励(2024年6月現在2名在籍)
②安全衛生委員会メンバーと産業医による職場巡視(年3回実施)
- 健康被害(顧客/エンドユーザー・地域住民)
- 当社では様々な薬品を取り扱っており、中には劇物毒物に該当するものがあります。劇毒物の取扱いに必要な資格・免許は当然取得済みであり、薬品の取扱いについて関連法規、ISO9001/14001などの国際規格、更に顧客要請等に準拠した厳格な手順を確立し、各ステークホルダーに及ぶ健康被害を決して出さないよう誠実に事業運営しております。
①薬品取扱い等に関する関連法規の更新情報の定期確認(毎月実施)
②緊急事態訓練の励行(毎年実施)
サプライチェーン
詳細は、「品質管理」の「責任のある鉱物調達」をご覧ください。
公益財団法人JPC奨学財団
詳細は、「公益財団法人JPC奨学財団」をご覧ください。